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人生初の福袋はアニメキャラ

月曜日, 11月 20th, 2017 | milton_C_N | Uncategorized

私はこれまで福袋に興味を持っていませんでした。内容がわからない、趣味ではないものが入っているかもしれない、要らないものだったら損をする。洋服も化粧品もアクセサリーも、本当に欲しいと思うものを定価で買ったほうが賢い。そんな意識でした。
しかし今年、私は始発に乗って開店前から行列に並んで福袋の販売を待つという経験を初めてしました。福袋予約ができるなら、それさえもしてしまいたいというほどの福袋欲が発生したのです。目的はアニメグッズ。独身で恋人もいない33歳独身女が、人生で初めて欲しいと思った福袋がそれでした。中身は当然わかりません。私は普段からその作品のグッズを買い漁っているため、すでに持っているものが入っている可能性は高い。しかしその福袋の包装には正月限定のオリジナルデザインが描かれた装飾品がついています。これだけでも買う価値はある。無駄ではない、絶対に後悔はしない。これまで一切福袋に手をつけてこなかった私は、自分自身を裏切るようなこの行動に大義名分を与えたく、何度も自分にそう言い聞かせ、暗闇の中を駅へと向かったのでした。
始発に乗ったこともまた、私にとっては人生初めての経験でした。ホームで息を吐きながら、手袋をはめなかったことを悔やみつつ自動販売機で缶コーヒーを買う。電車を待つ人の姿は多く、元旦から皆どこへ向かうのか。それぞれに違う目的があるに違いませんが、すべての人が自分にとって最高に幸せな場所を求めている。同じ場所にいるすべての人に私は勝手に仲間意識を持ちつつ、ようやく到着した電車に乗り込んだのでした。
1時間ほどかけて目的地に着きました。目当ての店はショッピングモールの中にあります。入り口前にはすでに行列が出来ていました。皆、自分と同じ物を狙っているのではと、さっきまでの柔らかな幸福感はどこへやら、競争心が少しずつ顔を出しました。まだ夜と思えそうな空の下、午前六時に扉は開かれました。しかしそれはショッピングモールが開放されただけで、各店のシャッターが開くのは9時です。それでも皆、警備員の「走らないで、急がないでください」という制止の声を振り切って急ぐのです。私もそうでした。しかしショッピングモールは複雑な造りをしており、ただでさえ方向音痴の私は普段から通い詰めているにも関わらずこんな大事な舞台で迷ってしまい、結局小学生くらいの女の子に先を越されて行列では二番目の位置に納まりました。それから2時間ほど、私はその女の子と二人、特に会話をするわけでもなくじっと立っていることになりました。
1時間前になると後ろに並ぶ人の数も増え、大はしゃぎの子供と叱る親の声で場所は賑やかになりました。私は一人だったので少し寂しかったのですが、孤独ではなかったです。ああ、楽しいな、みんな幸せそうだな、お正月だもんな。そんなことを感じながら、一言も言葉を交わさなかった少女と初めて会話をしました。彼女の両親も、このモールのどこかで福袋を待っているとのこと。おとなしい子でしたが、好きなキャラの名前を私に教えてくれました。
9時になり、シャッターが開きました。いつも新商品が陳列されている島什器が、ピンク色の福袋で埋め尽くされていました。価格帯は三千円、五千円、一万円の三つ。直前まで迷っていたのですが、私は真ん中の五千円を選びました。人いきれにむせ返りそうになりながら支払いを済ませ、そそくさとモールを後にし、私は近くのうどん屋に飛び込みました。とりあえず肉うどんを注文し、待っている間に福袋を開けました。中にはぬいぐるみが三つ、鉛筆や下敷きなどの文房具が数点、ゲームで使うQRコードのついたカードやメダルなど。すでに所持しているものや必要のないものばかりで、唯一持っていないものは大きなゴミ箱だけでした。「なあんだ」と心の中で笑いましたが、もしかしたら顔でも笑っていたかもしれません。空気の抜けたような心に肉うどんが染み入りました。今年初めての食べ物でした。
結局、持っていたぬいぐるみは同じ趣味の友人に譲りました。彼女はしばらくして転勤になり県外に越してなかなか会えなくなったのですが、現在SNSのホーム画面にそのぬいぐるみの写真を使ってくれています。ゴミ箱は部屋の中で使用しており、袋に使われていた装飾品は部屋の壁に貼り付けています。来年の福袋には何が入っているだろう。またあの少女に会えるだろうか。確かに私が思ったとおり、福袋の中には持っているものや使わないものがたくさん入っていました。でも不思議と清々しい思い出として私の中にはあるのでした。